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冬に多い心臓外科手術 −冠動脈バイパス術について−

はじめに

 冬になると外気温が下がるため、暖かい季節と違い身体には様々な負担がかかります。さらに、身体の活動性や適応力、抵抗力が低下することで、それまでは予備力(体力)で補えてきた病態が表に現れてしまうこともあります。

 特に、循環器系と呼ばれる心臓血管領域の疾患にはその影響が大きく、冬は患者さんの数も急増する季節です。その中で、虚血性心疾患(聞き慣れた病名に直すと、狭心症、心筋梗塞)が発症したり、そこまでは行かずとも元々原因はあったにもかかわらず隠れていた症状(例えば軽い動悸や息切れなど)が少しずつ現れてくるのも、圧倒的に寒い季節が多いのです。

虚血性心疾患について

 虚血性心疾患は、心臓の表面を走行し、心臓の筋肉を養っている血管(冠動脈)が動脈硬化などにより狭くなり血流が少なくなったり、閉塞して途絶してしまうことにより起こります。

 現在、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療は、循環器内科による、心臓カテーテル検査と同様の方法で行いステントを用いる経皮的冠動脈形成術(Percutaneus Coronary Intervention:PCI)が主役で、ほぼ90%以上の病態に対応出来ています。PCIは局所麻酔で、しかも比較的短い時間で行え(およそ1-2時間)、術後数日で退院出来る利点があり、患者さんにとって最適な治療法です。しかし、残りの10%に入る、多枝(狭いところが複数箇所ある)病変、左主幹部(根元の太いところ)の病変、PCI後に再発を繰り返す病変などに対しては、我々循環器外科が行う、冠動脈バイパス術が行われることになります。

冠動脈バイパス術

 冠動脈バイパス術は、冠動脈の狭いところ(狭窄部位)の先に新しい血液の流れ(バイパス)を作る手術です。バイパスに用いる血管(グラフト)は、胸の骨の裏側を流れる内胸動脈、前腕にある動脈(橈骨動脈)、胃袋の周りにある胃大網動脈、下肢の静脈(大伏在静脈)などを用いて行います。

 心臓の手術は、一般的に、全身麻酔下で人工呼吸器を用い、さらには人工心肺と呼ばれるシステムを取り付けることで心臓を止めた状態を作ってから行いますが、冠動脈バイパス術の特徴は、多くの場合、心臓を止めずに動かしたままの状態で行うことが出来ることです。このことから、この手術法を心拍動下冠動脈バイパス術と呼んでいます。PCIに比べるとかかる時間は長くなり(およそ5-6時間)、術後の回復にも時間を要します(退院まで約二週間)が、血流の回復においては確実性があり、心筋虚血が再発する可能性は比較的低い、という利点があります。

虚血性心疾患の治療と予防

 いずれの治療法を選択しても一番大切なことは、治療後の体内環境をしっかり整え、治療によって回復した良好な心筋への血流状態を維持していくことです。内服薬をきちんと服用し、外来での定期チェックを受けることはもちろん、病気を十分に理解し、適度な運動とともに、動脈硬化を進行させてしまう危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、過度の飲酒など)をしっかりと自己管理することがとても重要になります。

 動脈硬化は加齢とともに必ず起こってくるものですが、虚血性心疾患における病的な動脈硬化は、日常生活における予防策により避けられ得る疾患です。今現在、思い当たる症状がない方々も、油断せずに体内環境の整備をしっかり行っていくことが大切です。

○おわりに

 虚血性心疾患を含め、循環器領域の疾患に関することがございましたら、当院循環器センター(循環器内科・外科外来)まで、ぜひご相談ください。

 

循環器センター長 秋島 信二

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