当院では、平成25年12月上旬より在宅血液透析を開始しました。
在宅血液透析とは、自宅に透析装置を設置し、自分自身(まれに家人などの介助者の助けを借りて)で装置管理・操作、血管への穿刺(針刺し)をおこない透析する治療法です。
週3回・4時間という従来の血液透析の基準によらず、頻回血液透析や長時間血液透析が行えるため、食事・飲水制限がほとんどなくなり、生命予後がよく合併症が激減し、内服薬も格段に少なくなります。
血液透析をおこなう時間をご自身で決めることができるため、社会復帰が容易となります。また、血液透析中の時間を家族団らんや趣味などの自分の時間とすることができます。
ご興味のある方は、在宅血液透析とはをご参照ください。
患者様へ
令和2年6月1日現在において、在宅血液透析のトレーニングを予約され、お待ちいただいている患者様は0名となります。初回面談時は介助者様同行の上、来院してください。
在宅血液透析とは
- 在宅血液透析の概要
- 在宅血液透析(HHD)のメリット
- 当院における在宅血液透析(HHD)を導入する条件
- 在宅血液透析(HHD)開始に入るまで
- 在宅血液透析(HHD)開始後のサポート体制
- 在宅血液透析(HHD)の治療効果について
在宅血液透析について
腎不全が進行し、腎機能が正常の10%未満まで低下した場合、一般的には病院や診療所で血液透析治療が行われています。しかし、週3回の通院は身体的・精神的負担や時間的拘束によって、大きな負担となっています。
医療技術の進歩により、自宅で血液透析を行う在宅血液透析(以下HHD)が可能となり、近年は全国的に普及が進み、自分のライフスタイルに合わせて治療が出来ることから,QOL(生活の質)の向上が図れるようになりました。
腎不全に対する治療法
1.在宅血液透析の概要
自宅に透析装置を設置し、自分自身(まれに家人などの介助者の助けを借りて)で装置管理・操作、血管への穿刺(針刺し)をおこない透析する治療法です。
2.在宅血液透析(HHD)のメリット
- 生命予後がよく
(頻回血液透析や長時間血液透析が透析が行えるため)合併症が激減し、内服薬も格段に少なくなる。 - 食事・飲水制限がほとんどなくなる。
- 通院の回数・時間が大幅に少なくなる。
(安定期で月に1回の通院)
◎人生を自分で決める充実した人生
- 血液透析中の家族団らんや仕事など自分の時間を増やせる。
- 時間を自由に使えるため、社会復帰率が高くなる。
3.当院における在宅血液透析(HHD)の開始基準および中止基準
在宅血液透析(HHD)の開始基準
- 在宅血液透析(HHD)を施行する本人の強い意欲がある
- 原則として、年齢は18歳から60歳程度が望ましい
- 長時間透析又は頻回透析を希望する
(合併症の改善が望まれる方も含まれます) - 健康でかつ在宅血液透析に同意している介助者が確保出来ていること
- 介助者以外の家族も協力的である
- トレーニング期間、通院が可能である
(月~金8:30~17:15週3回程度) - 教育内容を習得出来ること
- 長時間頻回透析が体調にプラスになることを理解している
- 県内在住で原則当院から片道1時間未満に住んでいる
- 次のような疾患を合併していないこと
・未治療又は治療困難な心疾患
・脳血管障害
・急変・急死をおこす可能性がある合併症 - 次のような感染症がないこと
・B型又はC型肝炎
(治癒された場合はそれ限りではない)
・HIV感染症
・ATL感染症
・活動性梅毒 - 高度の視力障害がない
(自動車免許が取得可能な方又は視力が両眼で0.7以上) - 穿刺・止血が容易なバスキュラーアクセスがある
(カテーテルは不可) - 食事・体重・内服・バスキュラーアクセスの自己管理ができる
- 自己穿刺が出きる
(家族に依存するのは不可)
※開始基準をすべて満たした場合でも、在宅血液透析導入については当院で検討し決定致します。
在宅血液透析(HHD)の中止基準
- 透析をするバスキュラーアクセスが不良になった
- 県外もしくは当院より車で片道1時間以上の遠距離に転居した
- 介助者が何らかの理由(負担・苦痛・病気など)で透析介助ができなくなった
- 本人に重篤な症状が発生し、入院治療が必要となった
- 食事量の低下・活動量の低下・意欲の減退等により、採血データで透析効率低下が3ヶ月続いた
- HDP(透析量の指標)が72以下に3ヶ月続いた
- 本人及び介助者が加齢・認知症・その他の理由により、自己判断に欠けると医療者が判断した
- 本人又は介助者が視力低下した(両眼で0.7以下)
- 医療費・自己負担費用が未納となった
- 指導・指示・注意喚起に対して、理解を示さない
- 地域において、何らかのトラブルを起こした(ゴミの出し方等)
- 上記理由以外に、本人や介助者が中止を希望した
※在宅血液透析中止の可否については、当院で十分に検討し決定致します
4.在宅血液透析(HHD)開始に入るまで
①面談
お電話により、一般の方は当院医事課(内線2031)へ、医療関係者の方は地域医療連携室(内線2703)へお問い合わせしていただき、日程調整後、患者様・介助者の方と当院の医師・スタッフ間で面談を行います。その時にHHDの詳細説明を行い、意思確認後、病院側と患者様側それぞれがHHD可能であると判断した場合、その後のスケジュール確認を行います。HHDのトレーニングは平日(9時~17時)の外来受診にて行います。
②トレーニング
トレーニング方法は、たとえれば、自動車免許を取得するように実技と学科のカリキュラムに分かれます。
当院がお渡しする血液透析手順書にそってトレーニングを行い、ご自身で補足部分を書き込んでいただくなど工夫をして、自分だけの手順書を完成させます。
③実技・学科試験
トレーニングで習得した内容を元に、実技と学科の簡単な試験を行います。
合格基準に達しない場合は、再度見直しを一緒に行い合格を目指します。
透析手順書例
④患者様宅下見訪問
患者様の意思を確認し、承諾後に病院スタッフ及び、設置業者・水道・電気業者立会いのもと、HHDを施行するための設備環境のチェックを行います。このときに設備環境に不備がある場合、HHDを延期又は中止せざるを得ないケースもまれにあります。
⑤患者宅配管工事及び装置搬入
・工事について
在宅血液透析(HHD)をするにあたって、機器安全対策のため自宅の改築が必要です。
患者さんのお住まいが一戸建てなのか、集合住宅なのか(賃貸か、購入されているか)により工事の進め方が異なります。一戸建てであれば家のリフォームに問題はありませんが、集合住宅の方は、大家さんにリフォームの許可を頂く必要があります。
透析装置を使用しますので、管理人等にHHDを行うことを了承してもらえるかの確認も取ってもらいます。
- 工事のための事前確認事項
- 水道水を使用しているか。
- 排水は下水道か。
- 装置用の電気容量(20A)の増設はできるか。
- 装置の重量150kgに床が耐えられるか。
- 装置(1~2畳)及び、物品置場(2~3畳)程度のスペースがあるか。
※上記すべてを満たしていることが条件となります。
- 工事費用について
工事の内容により異なりますが、数万円から対応できます。 - 装置搬入
トレーニング及び改築工事終了後、透析装置(コンソール)と、RO装置(水処理装置)の搬入になります。
⑥在宅血液透析(HHD)開始(在宅工事終了し、装置搬入後HHDが開始となります)
- 外来受診
月に1~2回(開始後3ヶ月程までは月2回)当院透析センターへ受診していただき、採血等の検査や、医師と状態の確認をさせていただきます。 - 物品(在庫)管理について
基本的に外来受診時(開始後3ヶ月までは月2回)に患者様が記入した発注書をもとに、病院から物品をお渡ししますが、透析液原液や生理食塩水は発送方法が異なります。
方法としては、
- 月1回指定日に運送会社が配送する。
- 病院から処方する定期のお薬のように調剤薬局さんからもらう。
いずれも、配送料がかかる場合がありますので、患者さんの希望で選択していただきます。(要相談)
⑦その他
- 光熱費について
血液透析は大量の水と電気を使用します。ライフラインが整備されていなければHHDは施行できません。地域(自治体)によって光熱費(電気・水道代)は変わりますが、現在HHDされている患者さんにお聞きしますと、別途月2~3万円増えるそうです(週あたり25~30時間されている患者さん)。 - 装置等貸出し費用について
透析装置は患者様自身で購入はしません。当院からの貸出しであり、国からの補助がある為レンタル費用等のご負担はございません。また、故意ではない故障、装置消耗品等の交換もそれに含まれているため患者様ご自身のご負担はありません、患者様が支払う費用は、基本的に光熱費と配送代となります。(ネットワークカメラを使用する場合や回路離脱に必要な物品は別途負担あり)
5.在宅血液透析(HHD)開始後のサポート体制
①サポート対応
患者様に治療又は装置等の不具合が起きた場合は、緊急時ファーストコールとして、HHD担当の臨床工学技士が対応いたします。臨床工学技士が患者様からの情報を基に治療又は装置面の事なのかを判断し、医師・看護師・臨床工学技士・メーカー等が対応いたします。
②ネットワークカメラを用いたサポート
HHDを開始すると場所や気持ちの変化等により、不安になりがちです。当院では患者様からのご要望があれば、自信が持てるようになるまで、ネットワーク回線を利用したカメラをご自宅に設置可能です。これは透析中のみ、患者様の状態が確認できるカメラで、トラブル等があれば臨床工学技士がそのモニターを見ながら電話対応させていただきます(通信代等は自己負担)。
③メンテナンス対応
3ヶ月毎に、HHD担当スタッフが透析装置の点検並びにメンタルケアにお伺いさせていただき、操作方法の再確認や現在の状況確認をさせていただきます。またメーカーによる装置の定期点検を6ヶ月毎に行います。不備等があれば交換させていただきます。メンテナンス費用はかかりません。
6.在宅血液透析(HHD)の治療効果について
在宅血液透析(HHD)は理想的な腎臓の代償機能を励行できる唯一の治療方法です
標準透析は腎臓の機能をどれくらい代行できるかご存知ですか?
日本の75%の患者様が受けている4時間週3回透析(標準透析)、実はクレアチニンクリアランス(CCR)に換算するとたったの10ml/分で、正常の腎機能の10%でしかなのです。腹膜透析は5ml/分でもっと少ないです。ですから、透析者には多くの合併症が発症し、1年に10%、5年で50%もの方が亡くなっていく最大の理由です。保存期腎不全状態で腎外来にかかられた方は覚えていらっしゃると思いますが、クレアチンが高くなってきはじめても全く自覚症状が無い時期があったと思います。この頃の腎機能は30ml/分で正常の1/3だったのです。つまり、CCR30ml/分の透析ができれば、何の自覚症状もなく本来の寿命をまっとうできるのではないでしょうか?
透析プロダクト(HDP)とは?
それでは、どれくらいの透析がクレアチ二ンクリアランス30ml/分の透析なのでしょうか?
ここでHDP(透析プロダクト:透析量)という考えが参考になります。透析量の換算は、1回当たりの透析時間(A)と1週間の透析回数(B)で規定されます。
HDP=A×B×B
であり、1回の透析時間を延ばすよりも週の透析回数を増やした方が効果的です。
では標準透析を計算してみましょう
4時間×週3回×週3回=36 となります。
これが、10%の腎機能代償です。30%腎機能代謝する為には、その3倍が必要になります。つまり36×3=108 HDP(透析プロダクト)となります。
腎機能を30%代償できる透析の量は?
さあ、透析プロダクト108の透析の組み合わせを考えてみましょう!
週3回だと、1回12時間:これは実用的ではありませんね。
では2日間空けない(隔日)週4回ではどうでしょうか?
6.75時間×4回/週×4回/週=108
つまり、
週4回では6時間45分が理想的ということになります。
昼間に行うと腰が痛くなるかもしれません。
それでは、もっと透析の頻度を増やしてみましょう。
週5回では、4時間19分
週6回では、3時間丁度
週7回では、2時間12分 となります。
在宅血液透析(HHD)を受けている方の実態はどうなっているのでしょうか?
2013年の在宅透析研究会の報告です。
在宅血液透析(HHD)を選択し、人生をもっと積極的に生きようとしている方は、最近3年間で220人から450人へと倍増しました。その方々の選択した透析回数・時間は、週4~4.5時間が最も多く、次いで週4回5.5~6時間でありました。透析プロダクト(HDP)が1番多い方は、週7回8時間を行い、大学で教鞭をとり、フルマラソンにも参加しています。
透析量が多いほど体は本来の状況に戻り、有意義な人生を送れるようであります。
以上、わからないことがあれば何でもお気軽にスタッフに聞いてみてください。
問い合わせ先
午前9時~午後17時(月~金)
茨城県立中央病院 電話0296-77-1121
医療機関の方:地域医療連携室(内線2703)