当科の特色
部長
望月 康晃
(もちづき やすあき)
当院では「血管」の疾患に対して幅広く対応しています。血管とは動脈・静脈・リンパのことです。十分な説明を行なった上で、エビデンスに基づいた質の高い治療を提供いたします。
何でも結構ですので、「血管」に関してお悩みがあればご相談下さい。
全身血管疾患への対応
血管疾患は主に、動脈・静脈・リンパの3つに分類されます。
- 動脈疾患
主に拡張病変と閉塞病変に分けられます。拡張病変としては、胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤があります。これらの疾患に対し、低侵襲治療であるステントグラフト治療を導入しており、早期退院・早期社会復帰が可能となっています。循環器外科とも連携をとりながら治療方針を決めていきます。
閉塞病変としては、下肢閉塞性動脈硬化症が罹患率の高い疾患です。放置すると下肢が壊死します。カテーテル治療や外科的バイパス手術を積極的に行い、下肢切断を避け、可能な限り足を残すことを目指しています。
他に、バージャー病、ベーチェット病、内臓動脈瘤、腎動脈瘤、膠原病由来の血管炎、透析関連のシャントトラブル等々、取り扱う疾患は多岐にわたりますが、他科と連携をとりながら、これらすべての疾患に対応しています。大動脈瘤破裂や下肢急性動脈閉塞等の生命に関わる緊急疾患にも対応しています。 - 静脈疾患
代表的な疾患として下肢静脈瘤があります。低侵襲治療として局所麻酔での血管内焼灼術(ラジオ波焼灼術)を第一選択としています。片足15-20分程度で手術は終了し、早期の職場復帰を可能にしています。他に、深部静脈血栓症、慢性静脈不全症などに対しても、治療を行っています。 - リンパ疾患
リンパ浮腫が主に取り扱う疾患です。子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌等の手術時にはリンパ節郭清を行いますが、その影響で下肢や上肢に続発性のリンパ浮腫を発症することがあります。これは術後すぐ、もしくは数年後から手足に浮腫(むくみ)を認める疾患であり、放置すると日常生活は大きな制限を受けます。
①弾性ストッキング
②用手的マッサージ(セルフマッサージ)
③スキンケア
④運動
がリンパ浮腫治療の4本柱です。この4本柱のどれか一つでも欠けると、悪化の要因となりえます。しかし、これらの治療の意味を理解できている患者は少なく、医療者側も同様です。当院では、リンパ浮腫専門資格を持った医師・リンパ浮腫療法士が在院しており、適切なアドバイスをする事が可能です。
大変申し訳ございませんが、当院のリンパ浮腫外来は他院からの紹介は原則受け付けておりません。
学会等の認定施設
- 心臓血管外科専門医認定修練施設
- 日本脈管学会認定研修指定施設
- 胸部ステントグラフト実施施設
- 腹部ステントグラフト実施施設
- 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術実施施設
スタッフ紹介
部長
望月 康晃
(もちづき やすあき)
専門領域
- 血管外科、消化器外科
資格
- 日本外科学会 外科専門医
- 心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医
- 日本脈管学会 脈管専門医・指導医
- 日本血管外科学会 血管内治療認定医
- 日本ステントグラフト実施基準管理委員会 腹部ステントグラフト指導医
- 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会 下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医
- 浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会 浅大腿動脈ステントグラフト実施医
- 日本静脈学会 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター
- 透析バスキュラーアクセスインターベンション治療医学会 VAIVT認定専門医
所属学会
- 日本外科学会
- 日本脈管学会
- 日本血管外科学会
- 日本臨床外科学会
- 日本心臓血管外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器病学会
- 日本静脈学会
- 透析バスキュラーアクセスインターベンション治療医学会
医長
大片 慎也
(おおかた しんや)
専門領域
- 血管外科、消化器外科
資格
- 日本外科学会 外科専門医
- 日本脈管学会 脈管専門医
- 日本ステントグラフト実施基準管理委員会 腹部大動脈瘤ステントグラフト実施医
- 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会 下肢静脈瘤血管内焼灼術実施医
- 日本静脈学会 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター
所属学会
- 日本外科学会
- 日本脈管学会
- 日本血管外科学会
- 日本心臓血管外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本循環器学会
- 日本フットケア・足病医学会
- 日本静脈学会
- ヨーロッパ血管外科学会
(非常勤医師)
前部長
髙山 豊
(たかやま ゆたか)
専門領域
- 血管外科
資格
- 日本外科学会 外科専門医・指導医
- 心臓血管外科専門医認定機構 専門医・修練指導者
- 日本脈管学会 脈管専門医・評議員
所属学会
- 日本外科学会
- 日本脈管学会
- 日本静脈学会 評議員
- 日本心臓血管外科学会国際会員
- 日本血管外科学会
主な対象疾患・治療法
腹部大動脈瘤
開腹人工血管置換術
腹部大動脈が動脈硬化等によって壁が脆くなると、動脈瘤を形成します。破裂すると大量出血となり致死的となります。一般的に5〜5.5cm以上に腹部大動脈瘤が大きくなると破裂の危険性が高くなるため、手術適応となります。
お腹を縦に切開して動脈瘤を取り除き、人工血管で置換する手術は確実な治療法です。ただし、侵襲的な治療のために、体への負担はやや大きくなります。
ステントグラフト内挿術
お腹を切開せずに治療する方法です。足の太ももの付け根を切開もしくは穿刺し、折り畳まれたステント付き人工血管を血管内に留置し、動脈瘤をふたして破裂を予防する治療です。
お腹を開けないために体への負担は少なく、早期の退院を可能にします。
開腹人工血管置換術とステントグラフト内挿術のどちらが最適か、患者様一人一人の全身状態を考慮して治療を提供いたします。
胸部大動脈瘤
開胸人工血管置換術
胸を切開して動脈瘤を切除し、人工血管で置換する方法です。全身状態等を考慮して、この手術が適応になれば、当院の循環器外科で手術を施行します。
ステントグラフト内挿術
腹部大動脈瘤と同様、足の太ももの付け根を切開もしくは穿刺し、折り畳まれたステント付き人工血管を血管内に留置し、破裂を予防する治療です。胸を切開しないために体への負担は少なく、早期の退院を可能にします。
開胸人工血管置換術とステントグラフト内挿術のどちらが最適か、患者様一人一人の全身状態を考慮して治療を提供いたします。
下肢閉塞性動脈硬化症
カテーテル治療
高齢化社会を迎え、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や人工透析の増加とともに、動脈硬化の患者が急増しています。あまり知られていませんが、重度の足の動脈硬化(重症虚血肢)を放っておくと、生存率は3年で63%と言われており、これは約3人に1人が動脈硬化により命を落とす計算になります。胃癌や大腸癌等の消化器癌よりも生命予後は悪いと言われています。つまり、動脈硬化は「血管の癌」といっても過言ではありません。もちろんこれらの動脈硬化性疾患を早期に治療介入すれば、生活の質は劇的に向上します。
下肢閉塞性動脈硬化症とは、その名の通り動脈硬化により足の血管が狭窄もしくは閉塞し、血の巡りが悪くなる病気です。歩行すると足が痛くなったり、重症になると足が壊死します。
当院では、カテーテルを用いてこれらの血管の狭窄や閉塞を治療しています。局所麻酔で施行可能であり、体への負担も少ないために、概ね1泊2日で退院可能です。
下肢動脈バイパス手術
上述したカテーテル治療では治せない病変もあります。その場合は、外科的に下肢動脈のバイパス術を行い、足の血流を回復させます。
当院は総合病院であるため、他科とも密に連携をとりながら下肢切断を回避し、可能な限り足を残して歩行機能を維持することに努めます。
適応があれば、足の血流を劇的に改善することができる、下腿〜足部へのバイパス術(distal bypass)も積極的に行なっております。
下肢静脈瘤
血管内焼灼術
下肢静脈瘤とは、足の表面を走行している血管(静脈)に血液が逆流する病気です。そのために血管がコブのように膨らみます。足の見た目が非常に悪くなり、足のだるさ・むくみ・こむら返り(足のつり)・かゆみ等の症状を引き起こします。さらに悪化すると、足に色素沈着(茶色っぽい色素が皮膚に沈着)や潰瘍が出現し、皮膚が硬くなってしまいます。
原因として、長時間の立ち仕事、肥満、妊娠等の様々な要因が指摘されています。基本的に治療法としては、
①弾性ストッキングによる圧迫治療
②硬化療法
③ストリッピング手術
④血管内焼灼術・塞栓術
の4種類があります。手術を希望されるのであれば、血管内焼灼術・塞栓術が最も効果的で負担が少ない方法です。局所麻酔で施行可能であり、片足15-20分で手術は終了し、術後すぐに歩行可能で仕事復帰もできます。ガイドラインでも最も推奨されている方法です。
診療実績
令和5年度手術実績
胸部大動脈瘤 | ステントグラフト内挿術 | 2 |
---|---|---|
腹部大動脈瘤・腸骨動脈瘤(破裂含む) | 開腹人工血管置換術 | 3 |
ステントグラフト内挿術 | 16 | |
末梢動脈瘤(内臓動脈瘤含む) | バイパス術など | 3 |
血管内治療 | 17 | |
下肢閉塞性動脈疾患 | 血栓内膜摘除など | 5 |
バイパス術 | 5(うち足部バイパス2) | |
血管内治療 | 15 | |
急性動脈閉塞症 | 血栓除去術 | 4 |
バイパス術 | 1 | |
下肢静脈瘤 | ラジオ波焼灼術 | 21 |
慢性腎臓病ステージG5D | バスキュラーアクセス関連 | 9 |
その他 | 止血、趾切断など | 9 |
計 | 110 |
臨床研究
業績
お知らせ
- 当院広報誌 ほっとタイムズ(Vol.37)教えてドクターQ&Aのコーナーで「下肢静脈瘤」について取り上げました。下肢静脈瘤の症状や治療法など分かりやすく解説しています。