麻酔科術前外来について
全身麻酔をはじめとした麻酔科医による麻酔管理が必要な手術をうけることが決まったら、手術前日までに麻酔科術前外来を受診していただきます。外来は、1階外科外来と同じ場所で行なっています。外来では、事前にその日の外来担当医が患者さんの手術、術前検査の結果などから適切な麻酔方法を検討し、それに合わせた麻酔の説明パンフレットを事前に患者さんに読んでいただいています。その後に書いていただいた問診票を元に実際に患者さんを診察させていただき、パンフレットには書かれていない個々のリスクや現在飲まれている薬の当日の内服に関する注意などを説明させていただきます。
麻酔科術前パンフレット
全身麻酔用
硬膜外麻酔併用全身麻酔用
全身麻酔+体幹の神経ブロック用
全身麻酔+四肢のブロック用
全身麻酔+創部持続浸潤ブロック用
心臓血管麻酔用
予定帝王切開用
TUR(経尿道的手術)用
※一部の内容・図の出典:日本麻酔科学会ホームページ
手術を受けられる患者さんとそのご家族へ
術前の禁煙のお願い
患者さんご本人もしくは同居しているご家族の方が手術を受けられることが決まりましたら、すぐに禁煙をおねがいします。また一緒に暮らすご家族の方が手術を受けられる場合にも、手術を受けられる家族の方のためにも禁煙をお願いします。
手術は病気を治すために行うものですが、喫煙はそれを妨げる一因になります。喫煙をしていると他に何も病気を持っていなくても、米国麻酔科学会の術前状態分類(ASA-PS)で2となり、手術中および手術後の死亡率は、喫煙をしない他に病気を持っていない患者さん(ASA-PS1)に比べ統計上約10倍になります。具体的には整形外科領域では偽関節、骨癒合障害、創感染、肺炎、脳卒中、術後1年後の死亡率の全てが悪化することが知られています。その他、脳神経外科手術や心臓手術、非心臓手術でも遅発性の神経障害が多くなったり、1年後の生存率が低くなることが知られています。また、受動喫煙は能動喫煙と同様に影響があり、心臓の血管の障害や呼吸器合併症が増えることが知られています。
しかし、術前に禁煙することによって、様々な合併症の発生頻度を減少させることが出来ます。術前4~8週間の禁煙によって呼吸器系の合併症は減少することが知られています。禁煙によりその他の合併症も減少することが知られていて、何より創治癒改善をもたらします。そのため可能なら今すぐ、手術の4週間前には禁煙をしていただくことによって、手術療法による病気の治癒をよくすることが出来ます。
4週間前に喫煙が出来なかったら意味が無いかというと、そうではありません。喫煙による影響のうち一酸化炭素とニコチンは組織への酸素の運搬を減少させ、組織での酸素の消費量を増加させるが、その半減期は短く禁煙後2~3日で酸素需給に関しては改善すると言われています。禁煙期間が短くなってしまうから意味が無いと考えずに、とにかく禁煙をして頂けるようにお願いします。
以上のことから、日本麻酔科学会では周術期禁煙ガイドラインを定め、下記の10項目の認識の確立が重要として啓蒙活動をしています。
- 喫煙で種々の周術期合併症は増加し、術後の回復が遅延する。
- 術前患者には喫煙の有無を確認し、喫煙者には禁煙の意義と目的を理解させ、禁煙を促す。
- 手術前の、いつの時点からでも禁煙を開始することは意義がある。
- 手術直前の禁煙でも周術期合併症の増加はみられない。
- 可能な限り長期の術前禁煙は、周術期合併症をより減少させる。
- 受動喫煙も能動喫煙と同様に手術患者に悪影響を及ぼす。
- 敷地内禁煙などの無煙環境の確立は重要である。
- 禁煙指導は術前禁煙を促進し、術後の再喫煙率を低下させる。
- 周術期禁煙を契機とし、生涯の禁煙を目標にする。
- 周術期医療チームや外科系医師、禁煙外来など他科や他職種と協同して周術期禁煙を推進する。
下記の日本麻酔科学会のサイトに周術期禁煙ガイドライン全文が載っていますので、ご一読ください。
手術を受けるお子様の保護者の方へ
手術室への同伴入室について
小さなお子様にとって、家族と離れて一人で手術室に入ることは、非常にストレスのかかることです。全身麻酔で眠るまでの間、保護者の方に付き添って頂くことで、お子様の不安を多少なりとも軽減することができます。
当院では、お子様の手術に際し、保護者の方に同伴入室をして頂くことが可能です。同伴入室は強制ではありませんので、以下の注意事項をご確認の上、希望される場合は担当看護師までお申し出下さい。
注意事項
- 同伴入室の対象となるのは小学校低学年(8歳)までです。同伴入室が可能な保護者は1名のみで、原則として父母のいずれかとさせて頂きます。
- 同伴入室はお子様の不安を軽減するためのものです。保護者の不安が強いと、かえって悪影響を及ぼす場合がありますので、迷っている場合は看護師にご相談下さい。
- 話が理解できる年齢のお子様には、手術(麻酔)を受けることを前もって説明しておいて下さい。お子様が嫌がってぐずったり暴れたりした場合には、なだめたり手足を押さえたりして頂く場合があります。事前に「小児の全身麻酔導入の流れ」(PDF)に目を通しておいて下さい。
- お子様が眠ったら速やかに退出して頂きます。その他、手術室スタッフの指示には必ず従って下さい。
- 保護者の方に風邪症状や37.5℃以上の発熱がある場合は、同伴入室はお断りします。また、手術室内へのカメラや携帯電話といった記録媒体の持込は禁止です。
- 手術室内には、滅菌済みの器械や高価な機器がありますので、周辺のものには手を触れないで下さい。特殊な機器を使う場合などは、同伴入室をお断りする場合がありますのでご了承下さい。
ご不明な点がありましたら、手術室看護師が術前訪問に伺いますので、その際にご質問下さい。
術前中止薬について
術前中止薬一覧には、手術や侵襲的処置を必要とする場合の基本的な術前中止期間を記載しております。術前中止の判断は術式、侵襲度、また患者さんの状態に応じて主治医とご相談の上、行ってください。(2023年4月現在)
よくある術前合併症について
以下、日本麻酔科学会ホームページ(外部サイト)で紹介されています。