放射線治療センター集合写真
放射線治療センター集合写真

当センターの放射線治療装置

放射線治療センターの特徴

 放射線治療センターは、県央・県北地域の放射線治療の中核病院として、「すべての患者に安全・安心な高精度放射線治療を提供する」をミッションとしています。
 外部放射線治療では、通常の3次元放射線治療をはじめ、強度変調放射線治療(IMRT、VMAT)、脳および体幹部定位放射線治療、呼吸同期照射、画像誘導放射線治療等の高精度放射線治療を提供しています。遠隔式高線量率アフターローダー(RALS)を備え、子宮がんの腔内照射をはじめとする小線源治療を行っています。非密封線源治療(ラジオアイソトープ治療)としては、甲状腺がんやバセドウ病に対する放射性ヨウ素内用療法、前立腺癌骨転移に対するラジウム223治療を実施しています。また、筑波大学の非常勤医師による陽子線外来を開設し、陽子線治療を希望する患者さんの診察を行っています。
 研究活動としては、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)、JROSG(日本放射線腫瘍学研究機構)、AMED(日本医療開発機構)の多施設協同研究に参加しています。教育活動としては、院内の初期研修医や、放射線医学専攻医、茨城県立医療大学放射線技術学科の学生を受け入れ、卒前・卒後教育に取り組んでいます。茨城県立医療大学の後期大学院生を対象として、2年間の医学物理実習(医学物理士レジデント制度)も行っています。

スタッフ

医師
その他スタッフ
診療放射線技師河島 通久、生駒 英明、清水 誠、相澤 健太郎、加藤 美穂、北島 香奈、浅野 佑斗、藤澤 碧
医学物理士(専従)篠田 和哉、古山 良延
看護師
(※)がん放射線療法認定看護師
海老根 聖子(※)、宍倉 優子(※)、永堀 美幸(※)
(※)がん放射線療法看護認定看護師
クラーク大沼 あゆみ、小口 幸子
認定資格取得状況
資格人数
放射線治療品質管理士5
医学物理士4
放射線治療専門放射線技師2
第1種放射線取扱主任者4
がん放射線療法看護認定看護師3
(がん放射線療法看護認定看護師の役割)
認定看護師01
認定看護師02

主な対象疾患・治療法

放射線治療の手順

最初に放射線治療医の診察を受け、照射方法や治療開始日、線量、治療回数を決定します。次に、実際の治療の際と同じ体位で、治療部位に適した固定具(写真1)を作成します。その後、治療計画専用CT装置(写真2)で治療部位のCT画像を撮影します。この時、肺や肝臓など呼吸に伴う移動が大きい部位では、深吸気での息止めや4次元CTを撮影することで、呼吸同期照射用のCTを撮影します。
 撮影したCT画像は、放射線治療計画専用コンピュータに転送し、個々の患者さんに最適な治療計画を作成します。一般的な放射線治療は、この計算結果に基づいて実際の治療が行われます。後述するIMRT/VMATでは治療の際の装置の動きが複雑なため、評価用の検出器に照射して線量の検証を行い、正確に治療できることを確認してから実際の治療が行われます。これらの手順は、医師、物理士、技師、看護師が分担して行い、連携を取りながら放射線治療チームとして、安全・安心な治療を提供できるシステムを構築しています。
 診察室は緑を基調とした広くて開放的な作りとなっています。患者さんご自身の画像や実際の治療計画に基づく体内の放射線量の分布をモニターに示しながら、丁寧な診察を心がけています。

放射線治療1

(写真1)頭頸部領域の固定具

放射線治療2

(写真2)最新の治療計画CT

放射線治療3

強度変調放射線治療(IMRT/VMAT)

 IMRT/VMATは、複雑な病巣の形状に合わせた線量分布を作成することができる治療法です。病巣に線量を集中させ、周囲の正常組織の線量を少なくすることができます。そのため、放射線による正常組織への副作用の軽減と、線量増加による治療成績の向上が期待できます。最適な線量分布を作成するためには、高性能コンピュータを駆使しても時間がかかる作業となります。作成した線量分布は、ファントムで線量分布を検証した後に、実際の治療を行います。

対象疾患

 一般的には、前立腺がん、頭頸部がんがIMRT/VMATの対象疾患ですが、当院では、肺がん、食道がん、婦人科がんなど遠隔転移のないすべてのがんに対してIMRT/VMATを行っています。オリゴ転移と呼ばれる少数の転移巣にもIMRT/VMATを行うことが可能です。

【肺がんに対するVMAT】

強度変調放射線治療1
強度変調放射線治療2

定位放射線治療(STI)

 定位放射線治療は、体内の小さな病巣に対して、短期間に多くの線量を集中して投与する治療法です。1回で治療する方法を、定位放射線手術(SRS)、2回以上に分けて治療する方法をSRTと言います。治療部位によって、脳定位放射線治療と体幹部定位放射線治療に分けられます。当院では、部位に関わらずリニアックを用いて定位放射線治療を行っています。

1.脳定位放射線治療

複数の病変を一度に治療できるシステム(Multiple Brain Mets system)を導入しています。このシステムは、従来のシステムと比べて治療時間を大幅に短縮でき、患者さんの苦痛が軽減できています。脳定位放射線治療の治療回数は直径3㎝以下の病巣では1回~3回で、3㎝以上の病巣は5回から8回で治療します。1回の治療に要する時間は30分前後です。

対象疾患

各種がんの脳転移が主な対象です。聴神経腫瘍や動静脈奇形なども保険適応がありますが、当院では実施していません。

【多発性脳転移に対する脳定位放射線治療】

定位放射線治療1
定位放射線治療2

2.体幹部定位放射線治療(SBRT)

 脳以外の臓器に発生した小型のがん病巣に対して、放射線を集中させて行う治療です。当院では、小型肺がんは4回/4日または10回/2週、肝腫瘍には5回~10回/1~2週で治療しています。短期間で治療が終わり、外来通院でも受けられる治療法です。病巣の近傍に金マーカを挿入して行う、動体追跡放射線治療(迎撃照射)は県内では当院のみで行っています。

対象疾患

 保険診療で認められている疾患は、肺がん(原発、転移)、肝がん(原発、転移)、前立腺がん、膵臓がん、転移性脊椎腫瘍、5個以内の遠隔転移です(2022年2月現在)。体幹部定位放射線治療は、今後需要が高まる治療法です。

【肺がんのSBRT(線量分布図)】

緩和照射

準備中

SpaceOARシステム

当院では、前立腺がんの強度変調放射線治療を行うにあたり、前立腺後面と直腸の間にSpaceOARと呼ばれるハイドロゲルを挿入しています。ハイドロゲルがスペーサとなって、直腸にあたる放射線の量を少なくすることができます。
 この処置のためには、1泊入院していただきます。挿入したハイドロゲルは約3か月後に吸収されて体内から消失します。SpaceOARを挿入した前立腺がんでは、1回の線量を3.0グレイ、治療回数を21回に短縮しました。今後はさらに治療期間を短縮する予定です。

SpaceOARの手技
(JASTROガイドラインからの転用)

SpaceOAR1
SpaceOAR2

密封小線源治療

 ヒトの体内に器具を挿入し、遠隔密封小線源治療装置(RALS)でがんの近傍に線源を送り込み、がんの内部や近傍から放射線をあてる治療法です。器具を挿入した状態でCT画像を撮影し、治療計画装置で線量分布を計算し、腫瘍や正常組織に適切な線量を投与できるように調節して治療を行います(画像誘導密封小線源治療という)。器具挿入と同時に、腫瘍の中に直接テフロン針を刺入するハイブリッド腔内照射も行っています。

対象疾患

子宮頸がん、子宮体がん、腟がんが主な対象です。

【遠隔式リモートアフターローダー(RALS)装置】

RALS_01
RALS_02

【腔内照射の線量分布図】

密封小線源治療2

放射線内用療法(ラジオアイソトープ治療)

 放射性同位元素(RI;ラジオアイソトープ)を経口投与あるいは注射して行う治療です。体内に入ったRIから放出されるアルファ線やベータ―線によって、細胞レベルでの治療ができます。当院では、塩化ラジウム(Ra-223)と放射性ヨウ素(I-131)による放射線内用療法を行っています。なお、入院が必要な患者さんは、他の施設(主に県外)にご紹介しています。

対象疾患

骨転移を有する前立腺がん(Ra-223 )、甲状腺がん術後のアブレーションおよびバセドウ病(I-131)

診療実績

令和4年度

新規放射線治療患者の原発部位
原発部位症例数(名)割合(%)
肺・縦隔8419.8
乳腺5913.9
泌尿器5813.6
婦人科5713.4
頭頸部4911.5
胃・腸348.0
造血器・リンパ系266.1
肝・胆・膵245.6
食道143.3
皮膚・骨・軟部102.4
脳・脊髄40.9
その他(悪性)40.9
良性20.5
全体425100
新規放射線治療患者数の推移
新規治療患者の原発部位の推移
特殊治療患者数推移
特殊治療の患者数推移
特殊治療の内訳
 のべ患者数(名)
定位放射線治療61
 17
 体幹部44
強度変調放射線治療(IMRT)127
 前立腺がん40
 頭頸部がん38
 子宮がん12
 肺がん11
 食道がん8
 その他14
密封小線源治療41
非密封小線源治療(RI治療)5
 ヨウ素1314
 ラジウム2231(のべ4)

臨床研究・業績

 日本放射線腫瘍学研究機構(JROSG)や日本臨床研究グループ(JCOG)、婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)で行われている多施設協同研究に参加しています。また、がん県民公開セミナーを通して、放射線治療を知っていただく活動を行っています。放射線治療科で行っている研究や業績ならびに公開セミナーは下記のリンク集からご覧ください。

リンク集
業績

Q&A

放射線治療中に痛みなどの苦痛はありますか?

体外からの放射線治療(外部放射線治療)では、治療中には痛みや熱さを感じることはありません。密封小線源治療では、治療器具の挿入時に痛みがありますので、鎮静剤や鎮痛剤を用いることがあります。

X線治療と陽子線治療の違いは何ですか?

X線も陽子線も放射線の仲間です。陽子線治療は炭素線治療とともに粒子線治療と呼ばれ、X線と比べて体内の線量分布が優れているのが特徴です。がんの種類や大きさ、正常臓器との位置関係によっては、X線よりも粒子線が治療法として優れている場合があります。当院では、筑波大学と連携して陽子線治療外来を開設していますので、陽子線治療をご希望される患者さんに対しても、適切に対応しています。

どれくらいのがん患者が放射線治療を受けているのですか?

日本では2017年の新規放射線治療患者数は推定で約23万人、全がん患者の約25%でした。欧米では全がん患者の50%以上が放射線治療を受けているというデータがあります。国によってかかりやすいがんの種類が異なりますが、日本では放射線治療の普及と啓蒙がまだ足りていないのが現状です。