当科の特色

皮膚科・形成外科統括部長
狩野 俊幸



(かのう としゆき)

皮疹の裏に何があるか?


病態を考える皮膚科診療

 皮膚疾患の主要症状である皮疹を、視診・触診に加え10倍ルーペやダーモスコープを用いて詳細にとらえ理論的に分析し、悪性病変が疑われる場合はもとより炎症性疾患に対しても生検(令和4年度68件)を積極的に行い、病理組織像をふまえた正確な診断をつけ、治療に結びつけるよう努力しています。皮膚外科については形成外科と密接な連携のもと、最適な切除・再建ができるようにしています。

スタッフ紹介


皮膚科・形成外科統括部長
狩野 俊幸



(かのう としゆき)

専門領域
  • 皮膚悪性腫瘍診断
  • 皮膚病理診断
  • 乾癬、アレルギー疾患
  • レーザー治療を含む美容皮膚科
所属学会・専門医等
  • 日本皮膚科学会 専門医・代議員(医療問題検討委員)
  • 日本臨床皮膚科学会 会員
  • 日本がん治療認定医機構 暫定教育医

医長
斎藤 小弓



(さいとう こゆみ)

専門領域
  • 皮膚科
所属学会・専門医等
  • 日本皮膚科学会 専門医

医員
矢口 望



(やぐち のぞみ)

専門領域
  • 皮膚科
所属学会・専門医等
  • 日本皮膚科学会 専門医

医員
アマデアル 亜琵



(あまである あび)

専門領域
  • 皮膚科
所属学会・専門医等
  • 日本皮膚科学会

医員(専攻医)
加藤 優佳



(かとう ゆか)

専門領域
  • 皮膚科
所属学会・専門医等
  • 日本皮膚科学会

(非常勤医師)
ときわクリニック院長
鈴木 正之



(すずき まさゆき)

専門領域
  • 皮膚科
所属学会・専門医等
  • 日本皮膚科学会 専門医

主な対象疾患・治療法

  • 皮膚皮下組織に症状が出現する疾患はすべて取り扱います。膠原病・血管炎など、皮疹が全身性疾患の主要症状である場合もあります。
  • 外傷に関しては手指・顔面といった機能・容貌を特に重視しなければならない部位の挫創・熱傷にも対応します。
手術

 皮膚科医、形成外科医の緊密な連携のもと、正確な診断、適切な切除、術後の美的・機能的な要素も重視して、早期癌を含め可能な限り外来で行うようにしています。令和4年度、皮膚科単独の年間手術件数は112件で、主として皮膚皮下腫瘍摘出術ですが、皮膚悪性腫瘍摘出術も形成外科と合同例を含めると54件施行しています。疾患の種類,病変の部位によっては、炭酸ガスレーザーを使用し、メスを使わず縫合しない手術を行うこともあります(平成26年1月から新機種稼働,令和4年度は5件施行)。
 なお、平成26年4月1日付で悪性黒色腫に行うセンチネルリンパ節加算の施設基準を満たしました。

レーザー治療

 扁平母斑、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着、老人性色素斑など色素沈着性疾患については、メラニンをターゲットとしたQスイッチ付アレキサンドライトレーザーによる治療を施行しています。(令和4年度年間照射件数18件、自費疾患もあり)、炭酸ガスレーザー、内服薬、ハイドロキノン外用剤などを組み合わせて引き続き良好な結果を得ています。
 平成21年度より最新型のパルス幅可変式ロングパルスダイレーザー(V beam perfecta)を導入し、単純性血管腫、いちご状血管腫、毛細血管拡張症、酒さといった疾患に対して、レーザー光をヘモグロビンに吸収させ拡張血管を破壊する治療を開始しています。パルス幅固定式の従来機と違い、血管径に合わせたパルス幅(照射時間)を設定できるため治療効果が高く、また、レーザー照射直前に皮膚を保護する冷却ガスが噴霧されるため、照射エネルギーを上げても熱傷の危険が少なく、照射時の痛みも軽減されます。令和4年度の年間照射件数は56件でした。

紫外線治療

 ソラレンとUVAを組み合わせた従来のPUVA療法に代わり、平成21年度末にナローバンドUVB照射器、さらに29年度に全身型照射器を導入し、乾癬、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、菌状息肉症を始めとした皮膚悪性リンパ腫などに対する治療がより効率的に行われるようになりました。令和4年度の年間照射件数は685件でした。

乾癬の治療

 ここ数年来、生物学的製剤(TNFα阻害剤,IL-12/23阻害剤、IL-23阻害剤、IL-17A阻害剤、IL-17受容体阻害剤)の登場により、従来は治療困難であった関節症性乾癬、膿疱性乾癬、重症乾癬患者に対して、有効性を維持しながら安全に治療を行うことが可能となりつつあります。当院は「日本皮膚科学会による生物学的製剤承認施設」となっており、令和4年度継続投与中の症例は26件です。

アトピー性皮膚炎

 普通の生活ができるようにコントロールすることに主眼をおき、アレルギー的側面ばかりでなく、症状の悪化や感染症併発の原因となる皮膚のバリア障害を改善するため、スキンケアの必要性を十分に説明しています。重症患者には新規の抗体製剤であるIL-4/13受容体阻害剤を導入し、令和4年度継続投与中の症例は17件となっています。令和3年度はJAK阻害剤の導入も2例行いました。

その他

 皮膚疾患の1/3以上を占める湿疹性病変に対しては、パッチテストなどで可能な限り原因を突きとめるようにしています。また、様々な皮膚感染症も見落とすことがないよう、疑われれば顕微鏡検査、培養検査などを施行しています。
 平成20年度から、通常の治療に反応しにくいざ瘡に対して、学会ガイドラインでも推奨されているグリコール酸によるケミカルピーリングを本格的に導入していますが、引き続き良好な結果が得られています。(令和4年度年間施行件数42件、自費)

診療実績

主要な疾患の治療成績(令和4年度)

1)皮膚の悪性腫瘍

 皮膚の悪性腫瘍には様々な疾患がありますが、頻度が多い疾患は、有棘細胞癌、基底細胞癌および悪性黒色腫です。さらに、有棘細胞癌の早期病変として、前駆症の一つである日光角化症、上皮内癌の一型であるボーエン病がよく遭遇する疾患です。皮膚の悪性腫瘍の臨床的な特徴は、患者さんの目にも触れることが多いため早い時期に受診し、早期に対処できる機会が多いということです。しかしながら、鑑別すべき良性疾患、炎症性疾患は多数あり、いかに疑う目を持ち鑑別できる技術を備えているかがポイントといえます。皮膚悪性腫瘍について、令和4年度に新規に対応した件数を表1に示します。半数以上は県央地区の皮膚科開業医からの紹介例で、病診連携の重要さを実感します。その特徴は前年度に引き続き高齢者皮膚癌患者の増加で、特に日光角化症をベースにした有棘細胞癌および基底細胞癌の症例が著増しています。コロナ禍受診控えの影響が示唆されます。とは言え、早期に確実に診断することは治療成績に直結し、過去5年間を振り返っても、遠隔転移例はあるものの腫瘍死した症例はありません。令和2年度に悪性黒色腫の術後補助療法として抗PD-1抗体を導入し、更なる予後の改善に繋がることが期待されます。

2)皮膚色素沈着性疾患に対するレーザー治療

 皮膚の有色病変に対するレーザー治療の原理は、レーザー光がメラニン顆粒やヘモグロビンなどの有色物質に選択的に吸収され、吸収した物質およびこの物質を含む細胞あるいは目的とする周囲組織のみが破壊されることにあります。この選択的な作用によりランダムな周囲組織の損傷を抑制でき、治療効果とともに瘢痕形成に対する安全性も優れたものとなっています。現在当科で使用している機器はQスイッチ付アレキサンドライトレーザーとパルス幅可変式ロングパルスダイレーザー(V beam perfecta)で、前者は主にメラニンをそのターゲットとしています。皮膚の色素沈着性疾患には様々なものがあり、治療の効果は疾患ごと、さらには症例ごとに一様ではありませんが、照射件数が最も多い疾患は老人性色素斑です。1か月以上経過を観察できたこれらの症例について治療結果の概略を示しますと、著効(色調が健常皮膚とほぼ同程度となった)3割、有効(色調が著しく改善あるいは面積が縮小し患者が満足している)5割、やや有効(診察者側から見て色調が少しでも改善した)2割でした。無効や悪化の例はありませんでした。レーザー照射後は,程度に個人差はあるものの炎症後色素沈着が必発で、これは時間とともに軽減します。従って、経過観察期間をさらに長くできれば、実際の結果はさらに優れたものであることが予想されます。

表1.主要な皮膚悪性腫瘍(令和4年度)

 症例数
有棘細胞癌(付属器癌を含む)25例
日光角化症7例
ボーエン病14例
基底細胞癌15例
悪性黒色腫1例
乳房外パジェット病1例
間葉系肉腫4例

臨床研究

皮膚科臨床研究発表実績

茨城県立中央病院臨床研究発表実績まとめ

当科の取り組み

赤アザ、赤ら顔、赤ニキビでお悩みの方へ

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