診療科
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診療チーム
病院参事
口腔統括局長
筑波大学地域臨床
教育センター教授
柳川 徹
(やながわ とおる)
口腔がんを中心に口腔顎顔面外科の手術を行っています。
茨城県の県北および県央地域で『口腔がん』の治療を行っている口腔外科が数少ない現状を解決すべく、口腔がんの治療を中心に2018年より筑波大学附属病院 茨城県地域臨床教育センターとして筑波大学附属病院に通院困難な患者さまにも高度な医療を提供できるよう開始いたしました。口腔がんについて対応の困難な医療機関、歯科医療機関などをはじめ歯科治療に関わっております。
また、頭頸部キャンサーボードを毎週開催して他職種との連携を図り、『耳鼻咽喉頭頸部外科』・『放射線治療科』・『放射線診断科』・『消化器外科』・『消化器内科』・『形成外科』などの診療科やメディカルスタッフと協議して最善の医療を提供すべく治療方針を決定しています。
一方、『がん医科歯科連携』に重点を置いて、当院(医科)で手術や化学療法,放射線療法を受けていただく患者様の口腔の管理を行い(周術期等口腔機能管理)、計画された治療が口腔のトラブルで滞ることのないようサポートすることを重視しています。このために近隣の歯科医師会と協力して『病診連携』を推進しております。
一般の歯科診療所で対応できないような顎口腔領域の口腔外科疾患を対象に治療を行っています。《主な対象疾患》
病院参事
口腔統括局長
筑波大学地域臨床教育センター教授
柳川 徹 (やながわ とおる)
口腔癌
唇顎口蓋裂
顎変形症
顎顔面インプラント
顎顔面外傷
口腔外科一般
後期研修医
野口 篤郎 (のぐち あつろう)
口腔外科
後期研修医
根本 雅子 (ねもと まさこ)
口腔外科
(非常勤医師)
石岡第一病院 口腔外科部長
萩原 敏之 (はぎわら としゆき)
顎変形症
有病者歯科
顎顔面インプラント
顎顔面外傷
口腔外科一般
口腔がんは、口の中のがんです。さらにそのできる部位によって
そのほかには唾液腺に発生するがんなどもみられます。一般的に良性の腫瘍に比べて、悪性腫瘍には、下記などのような共通の性質があります。
がんは遺伝子の変異でおこる病気と言われています。ごく一部のがんを除いて、後天的な要因で起こっています。
遺伝子の変異は様々な要因で誘発されますが、とくに口腔がんの発生と関係が高いものの中には、喫煙と飲酒は口腔がんの発症リスクを高めます。また、義歯などによる慢性刺激、パピローマウイルスなども一部は原因として疑われています。
口腔がんは男女比3:2となっており、60歳代の人に多く発生します。大きく分けて表在性、外向性、内向性などの形状があります。疼痛のある場合、疼痛のない場合、急速に増大する場合、以前からあってなかなか変化しない場合など症状は多彩ですが、おおむね10ミリ大を越えてくるようであれば、早めの歯科もしくは耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
がんのできている部位や病期、組織の特徴などを総合的に診断して、治療方針を決めますが、一般的には手術療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3つの方法を、単独あるいは組み合わせて治療します。頸部のリンパ節転移があれば頸部郭清術、また原発巣の切除範囲が大きい場合には他部位からの組織を移植する再建術も行われます。
治癒率は、がんの発生した部位や病期により異なりますが、口腔がん全体の5年生存率は60~70%です。初期のものではほとんどの症例が治癒しますので、恐れずにできるだけ早期に受診することが大切です。
口腔がんでは、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤)の3つの方法を、単独あるいは組み合わせて治療します。がんのできている部位や病期、組織の特徴などを総合的に診断して、治療方針を決めます。頸部のリンパ節転移があれば頸部郭清術、また原発巣の切除範囲が大きい場合には他部位からの組織を移植する再建術も行われます。
初期のものではほとんどの症例が治癒しますので、恐れずにできるだけ早期に受診することが大切です。
放射線治療も当院では放射線治療科と綿密に連携を取って治療を行います。また、口腔がんの手術の後に病理の検査の結果で、がんが予想以上に進展していることが解ったときや、リンパ節が多数転移していて後で再発するリスクが高いときには放射線治療を手術に追加で行うことがあります。おおよそ数週間から2ヶ月程度の入院となります。
現時点で固形がん(血液以外のがん)を抗がん剤のみで治癒できる方法はほとんどありません。残念ながら薬だけで治る口腔がんは現時点では見つかっていません。しかし、放射線化学療法として放射線治療と同時に行って、放射線の効果を増強させるなどで使用されることがあります。
シスプラチンというDNAなどの生体成分と結合して分裂細胞に対して抗がん効果を発揮する従来からの抗がん剤がはじめに使われますが、がんの状況と患者さんの全身状態によって内容が変わってきます。
近年、分子標的治療という薬が開発され、がん細胞の上皮成長因子の阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などが出てきました。手術、放射線などが有効でない場合に腫瘍内科等と相談して使用を検討する場合があります。
白板症は口腔潜在性悪性疾患(Oral potentially malignant disorders)に含まれる疾患です。我が国では約3.1〜16.3%(口腔癌診療ガイドライン)ががん化すると言われています。粘膜の最も外側の部分で ある上皮が肥厚したもので、その下の毛細血管が透けて見えなくなり、結果的に白く見える状態を指します。痛みはありません。
経過観察して表面性状が変わってきたりした場合にはがん化していないかチェックするため生検を行います。外科的に全部切除してしまう選択肢もあります。
※口腔潜在性悪性疾患: Oral potentially malignant disorders 2017年WHOによって定められた、口腔のがんになりやすい病変。12種類の疾患がある。
扁平苔癬も口腔潜在性悪性疾患に含まれる疾患ですが、白板症ほど口腔粘膜にレース状、網状の模様の粘膜病変です。がん化のリスク0〜3%、中には 5.3%という報告もあります。経過ととも白い線状の病変の中に発赤やびらんを認めたり、その形状を変え、刺激物がしみたり接触により出血したりします。病変は左右対称に生じることが多く、多彩な臨床像を呈します。自然治癒することもありますが、長い期間かかることが多いです。炎症がひどい場合はステロイド剤の噴霧や塗布することがありますが、根治的治療とはなりません。
口腔内には、がん(悪性腫瘍)の他に、良性腫瘍があります。写真は下顎隆起
舌には様々な構造物がありますが、普段は口の中をよく見たことがないため、何かのきっかけで気にして見てみると、元からあった構造物ががんでないかと心配になる方がいらっしゃいます。日頃見慣れない舌の奥や咽頭の近くには、数ミリ程度の様々な構造物がありますので、慌てないようにしましょう。有郭乳頭、葉状乳頭、舌扁桃などは舌の奥の方にあるので、見えにくいので、気づくと気になることが多いようです。
※だだし、10ミリを超える大きさのものは少ないので、その場合は、お近くの歯科や耳鼻咽喉科を受診してください。
口腔がんの手術では顎骨の切除を行うことがあり、顎骨の欠損のため、顔貌の著しい変形が認められることがあります。
当科では様々な方法で、手術前の元の顔貌に回復できるような技術を駆使しています。
顎骨の切除の症例では術前のCTから再構築した3Dモデル(Medical rapid prototyping)を用いて、術後に下顎骨の再建を行い良好な結果を得ています。
Azuma M, Yanagawa T, et al. Head Face Med 2014;10:45. doi: 10.1186/1746-160X-10-45.
当院では通常の歯科インプラント(後述)も対応していますが、口腔がんその他の病気や事故で顎を失った人のために、顎顔面インプラントも行っております。
顎顔面インプラントは、「広範囲顎骨支持型装置」としてがん、顎骨骨髄炎、外傷等の後などの特殊な場合、保険治療で診療ができます。適応例が限られますので、よく相談下さい。
智歯(ちし:親知らず)では、しばしば抜歯の必要があります。下顎の智歯では萌出しても傾斜したり、水平位に埋伏したりすることはよく知られています。智歯の傾斜や水平位の半埋伏は、第二大臼歯の後ろの面を不潔にし、放置すると深部にう蝕(むし歯)をつくります。また、智歯のまわりは不潔になりやすく、しばしば炎症(智歯周囲炎)をおこします。
このため、このような智歯は抜歯の対象となります。埋伏智歯も歯列異常や咬合異常を引き起こしたり、まれに埋伏智歯周囲に嚢胞をともなうことがあります。
水平埋伏智歯の抜歯は歯肉を切って骨を削って歯冠を露出させた後、歯冠を分割、場合によって歯根を分割を行います(図1〜12)。
抜歯後は縫合を行います。手術後3日目くらいまで、腫れた後、退きます。抜糸は約1週間後行い終了となります。
埋伏智歯の埋まっている場所が非常に深かったり、顎骨との癒着が著しい場合、抜歯に対して恐怖心の強い方、嘔吐反射が強い方、その他特殊な事情で通常の局所麻酔で外来での抜歯が困難である患者様には全身麻酔での抜歯に対応しております(前日入院、翌日全身麻酔下で抜歯、翌々日午前中退院/2泊3日)。
通常の抜歯や軽い処置でも緊張の強い方、抗血栓療法薬の使用などで術後の出血が予想される方、全身疾患などの理由で特別な理由のある方では入院下で抜歯が必要な場合があります。状況に応じて静脈内鎮静法を行い処置を行い、精神的にリラックスした形で診療を行います(1泊)。
下顎前突、上顎前突など、歯科矯正治療だけでは修正が困難な先天的に顎の骨格に異常のあるものを顎変形症と言います。術前矯正を矯正歯科と一緒に行い、治療計画を立てた後、当院で手術を行います。
下顎前突症例では下顎枝矢状分割法という下顎神経を切らないように縦に分割して、顎を前(後)に移動させてかみ合わせを正しい位置に移動させます。
上顎前突の症例ではLeFort I型骨切り術方法で、大口蓋動静脈を切らないように残しながら、顎を前(後)に移動させてかみ合わせを正しい位置に動かして固定します。
周術期等口腔機能管理とは、手術の前後で口腔内を徹底して管理をすることによって術後の誤嚥性肺炎などの合併症を減らしたり、放射線治療や化学療法の際にできる口内炎を軽減させ治療をスムーズにさせたり、全身麻酔の挿管の際に問題となる歯を抜歯したりして、病気の治療の間に支持療法を行い口腔の管理をおこなうことの総称です。
頭頸部領域、呼吸器領域、消化器領域等の悪性腫瘍の手術、 心臓血管外科手術、人工股関節置換術等の整形外科手術、臓器移植手術、造血幹細胞移植、脳卒中に対する手術などの手術前後に行っております。
手術前の口腔衛生の指導
プラークフリー法による歯垢の除去
病棟往診による口腔内の管理
当院では手術や放射線、化学療法の前に、担当医師より、かかりつけの歯科医院で、周術期等口腔機能管理を開始していただくようお勧めしております。
入院中はかかりつけ歯科医院から当科にお送りいただいた周術期等口腔機能管理計画書に基づいて、手術直前に口腔内を徹底して清掃指導とPMTC(※)を行い、手術前にはプラークフリーを達成しております。
※PMTC:Professional Mechanical Tooth Cleaning
歯科衛生士や歯科医師が低速回転器具を用いて歯の表面、歯の隙間などの汚れを徹底して除去する方法
周術期等口腔機能管理は手術前にお近くの歯科医院に受診していただいた後、入院後は、当科で手術前の口腔衛生指導と口腔内を徹底的に綺麗にてしプラークフリーを達成します。
手術の後でさらにチェックを行い、手術前にお送りいただいた歯科医院に報告いたします。
化学療法、放射線療法の場合は治療の間、定期的に口腔内の清掃状態を管理します。
※治療の方法、日程の都合や、入院手術のの日程の関係で、手順が変更になることがあります。
令和3年の手術実績は表の通りです。
(全身麻酔手術65件、局所麻酔手術6件)
手術名 | 分類 | 全身麻酔 | 局所麻酔 |
---|---|---|---|
抜歯術 | 埋伏抜歯(智歯) | 18 | |
埋伏抜歯(その他) | 4 | ||
埋伏抜歯(智歯) ※外来診察室にて(静脈内鎮静法下) |
2 | ||
抜歯 ※外来診察室にて(静脈内鎮静法下) |
2 | ||
消炎手術 | 腐骨除去術 | 4 | 1 |
口腔外消炎手術(緊急頸部切開) | 1 | ||
口腔内・外消炎手術(外来にて) | 1 | ||
良性腫瘍・嚢胞手術 |
顎骨腫瘍摘出術 | 10 | |
歯肉腫瘍摘出術(下顎右側臼歯部) | 1 | ||
舌腫瘍摘出術 | 3 | ||
術後性上顎嚢胞摘出術 | 1 | ||
悪性腫瘍 | 舌悪性腫瘍手術(舌部分切除) | 7 | |
舌悪性腫瘍手術(右可動部半側切除) 肩甲舌骨筋上頸部郭清術(右) |
1 | ||
舌悪性腫瘍手術(右可動部半側切除) 全頸部郭清術(右) |
1 | ||
舌悪性腫瘍手術(右半側切除) 右外側大腿皮弁再建 |
1 | ||
舌口底悪性腫瘍手術(部分切除) |
1 | ||
口底悪性腫瘍手術(切除) |
1 | ||
下唇悪性腫瘍手術(部分切除) |
1 | ||
下唇悪性腫瘍手術(部分切除) |
1 | ||
頬粘膜悪性腫瘍手術(切除) |
1 | ||
上顎歯肉悪性腫瘍手術(切除) |
1 | ||
下顎悪性腫瘍手術(切断) |
1 | ||
下顎歯肉悪性腫瘍手術(区域切除) |
1 | ||
気管切開術(局所麻酔下) |
1 | ||
上顎洞陥入歯除去術(犬歯窩開削による) |
1 | ||
上下顎形成術 |
1 | ||
舌小帯形成術 |
1 | ||
胸骨・上顎骨・下顎骨観血的整復術 |
1 |
当科歯科として一通りの設備はあり、一般の歯科治療も可能ではありますが、通常は行っていない疾患や専門的に行っていない疾患があります。その場合は、お近くのかかりつけ歯科医院や、その他の専門の診療施設にご紹介する場合がありますので、診療科の専門性をよく御理解いただき受診していただけますようお願いいたします。
その他 詳細はお問い合わせください。
当院広報誌ほっとタイムズ(Vol.27)病気を知ろうQ&Aのコーナーで「口腔ケアと健康寿命」について取り上げました。