診療科
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診療支援部門
研究・研修支援部門
診療チーム
女性のライフサイクルの中で生じる、様々な医学的トラブルのよろず相談所のような診療科です
女性として出生し、一生の間にいくつもの大きな医学的イベントを経験しながら年を重ねていきますが、時に医学の手助けを必要とする機会が訪れることがあります。
思春期には二次性徴や性についての悩み、また性成熟期においては妊娠や不妊、子宮や卵巣など内性器の疾患など。そして、更年期や閉経煮ず違反して生じる症状やそれ以降においては骨粗鬆症など、我々産婦人科はこのような女性のライフサイクルの中で生じる様々な身体的問題点の相談所としての役割を担います。総合病院としての当院のなかで他科と連携しながら解決法を探っていきたいと思います。
また、当科は当院の茨城県地域がんセンターの一員として、積極的に悪性腫瘍の治療も行っています。県央・県北や県西地区からも患者さんを集めており、茨城県内のがん診療実績は常に上位に入っています。婦人科がん治療については全国の主要癌治療施設の所属するJCOG, JGOGなどといった国内の臨床試験研究グループにも所属しており、臨床試験にも取り組んでおります。同時に内視鏡手術やロボット手術も導入しており、患者さんの低侵襲手術への取り組みも行っています。
2015年から分娩取り扱いを再開いたしました。院内に新生児科医師や精神科医師も診療に参加している周産期センターを開設し、34週以降の分娩(場合によっては他院に母体搬送する場合もございます)や社会的問題をかかえていたり、精神疾患合併妊婦さんの妊娠・分娩管理に当たっています。
同様に他科疾患を合併している患者さんで処方を継続しながら妊娠・授乳か可能かどうかを相談する「授乳とお薬外来」を設置し、患者さんに好評です。妊娠・分娩をできるだけ心地よく、安全に行える病院を目指しています。
産婦人科
婦人科腫瘍
部長(婦人科腫瘍担当)
越智 寛幸 (おち ひろゆき)
産婦人科
婦人科腫瘍
内視鏡手術
ロボット手術
部長(周産期医療担当)
安部 加奈子 (あべ かなこ)
産婦人科
周産期学
胎児医学
臨床遺伝医学
母乳育児支援
部長(婦人科遺伝子治療担当)
道上 大雄 (みちかみ ひろお)
産婦人科
婦人科腫瘍
医長
加藤 敬 (かとう たかし)
産婦人科
医員
東 福祥 (ひがし ふくよし)
産婦人科
医員(専攻医)
高階 沙英美 (たかなし さえみ)
産婦人科
医員(専攻医)
伊東 慶彦 (いとう よしひこ)
産婦人科
医員(専攻医)
熊﨑 誠幸 (くまざき まさゆき)
産婦人科
(非常勤医師)
水戸済生会総合病院 産婦人科主任部長
藤木 豊 (ふじき ゆたか)
産婦人科
周産期医療
(非常勤医師)
水口 剛雄 (みなくち たけお)
産婦人科
(非常勤医師)
県北医療センター高萩協同病院
産婦人科部長
井上 久美子 (いのうえ くみこ)
産婦人科
(非常勤医師)
大谷 貴美 (おおたに きみ)
産婦人科
県央・県北の婦人科がん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんなど)治療の中核病院として、手術療法・化学療法・放射線療法を組み合わせた集学的治療を含め、婦人科がんに対する最適な医療を進めております。県唯一の国指定のがん診療連携拠点病院である当病院の婦人科部門としてふさわしい高度な医療も担当しており、筑波大学附属病院と診療・教育・研究で綿密な連携を行っています。セカンドオピニオンもお受けしております。
婦人科良性腫瘍 手術も行う予定ですが、あくまで悪性腫瘍の手術を優先としますので、手術までに時間を要することがあります。ご了承ください。
●子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)を始めました
子宮動脈塞栓術(UAE)とは、子宮筋腫によって生じる症状(過多月経、月経痛、貧血、腹部腫瘤の自覚など)を開腹せずにカテーテルという細い管を用いて治療する方法です。入院期間が短くて済み、日常生活にも早く戻れるのが特徴です。なお、治療には健康保険が適用されます。詳しくはこちら(PDF)をご覧下さい。
子宮に発生する硬いこぶ状の腫瘍で、基本的には良性の病気です。子宮が不均等に腫大します。子宮のできる場所により、①漿膜下筋腫、②筋層内筋腫、③粘膜下筋腫に分類されますが、複数発生する場合はそれぞれがどれかに当てはまります。
症状としては、月経量の増加(過多月経)、それによる貧血、月経痛、腹部膨満などです。大きいものでは20cmを越える場合もあり、腹部腫瘤を自覚することがあります。腫瘍の触知以外は月経に伴って生じる症状が主で有、閉経すれば、主な症状は改善して腫瘍自体も小さくなる場合がほとんどですが、月経過多による貧血を来す場合や大量の出血で日常生活に支障を生じる場合などは治療が必要となることもあります。
筋腫が大きくなく、月経量が中等量であれば、腫瘍の大きさを経時変化を観察しながら造血剤で貧血の改善を図ることも可能です。大きくても貧血症状など自覚症状が乏しい場合は治療の必要がない場合もあります。
反対に、患者さんが子宮筋腫により何らかの日常生活に不便を生じて治療を希望する場合は治療を選択することとなります。産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編では約6cm以上の筋腫が治療の適応と記載されていますが、ご自分で下腹部にシコリが自覚するようになると、治療を考えても良いサイズかと思います。
また子宮筋腫がある場合に妊娠経過や分娩経過に異常を来す可能性も考えられるため、治療を早めに決断する必要があるかもしれません。
症状の軽重や妊娠の希望により治療法は様々です。妊娠希望のある方は子宮を摘出することはできませんので、子宮筋腫のみを摘出する、筋腫核出術が良いでしょう。その方法には開腹手術によるものと、腹腔鏡手術によるものがあります。腹腔鏡手術の方が、傷は小さく術後の開腹も良いのですが、筋腫の位置や個数によって開腹手術のほうが良い場合もありますので、主治医とよく相談することが必要です。
子宮の内腔に発生する粘膜下筋腫は経腟的に(開腹しないで)子宮鏡という内視鏡用いて切除することが可能です。
一方で以後の妊娠を希望されない方は子宮全摘出を行うことで症状を改善することが可能です。とはいえ、そこまでの負担は希望されない場合は核出術や子宮筋腫を養う血管を塞栓させる子宮動脈塞栓術、薬物で一次的に閉経状態にすることによって症状の軽減を図るホルモン療法、また、子宮内にホルモン入りのデバイスを挿入する方法など様々な方法がありますので、主治医と相談してみてください。きっとあなたの希望に沿った治療法があると思います。
子宮の構造と周囲の臓器
出典:国立がん研究センター がん情報サービス
子宮と膣を繋ぐ子宮頸部が、がん化した悪性腫瘍です。多くは過去にヒトパピローマウイルス(HPV)が性交等により子宮頸部に感染し、一部の持続感染例から発生します。子宮頸がん検診により、比較的早期から発見されれば生命予後がよいのですが、進行例や再発するものは監視が難しくなります。
HPV感染が原因であることが多いので、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を若年時に接種することが有効です。本年から政府による積極的HPVワクチン接種勧奨が再開しましたので、思春期前後の女性は是非接種をしてください。接種と共に大切なことは早期発見です。
我が国では20歳から子宮頸がん検診が制度化されていますので、併せて受診されるよう強くお勧めします。進行した状態で発見される方は、検診を受診されていない方がほとんどですので、定期的に受診するようにしましょう。
原則的には病変や子宮全体を摘出する方法をとります。進行症例では、放射線治療もしくは、それに抗癌剤治療を追加する方法や抗癌剤単剤治療も行われます。
初期であれば、妊娠を希望する場合は子宮頸部の病変のみを切除する方法で妊孕性を温存することが可能な場合があります。また、子宮頸がんの前がん状態では、治療後の妊娠時に影響を少なくすることができるレーザー焼灼術や病変をコイン状に切除する低侵襲手術も行っておりますので、受診の際には治療後の妊娠希望の有無について、希望をお聞きします。
浸潤癌と言われる状態の場合は原則的に子宮を摘出する手術を行うか、放射線治療(抗癌剤との併用)を行います。
それぞれ治療後に起こりえる後遺症の種類が異なりますので、主治医と良く相談して治療法を決定してください。もし、遠隔転移などを来している場合には抗癌剤による治療が中心となりますが、進行程度が強いと治癒しない可能性が高くなります。そうならないよう、早期に発見するために、がん検診は重要です。
2011年の着任以来、県央・県北 地区を中心として悪性腫瘍症例を中心として診療を続けておりましたが、新型コロナ感染症による診療体制の変更等により、2020年より入院診療患者数が減少しております。とはいえ、可能な限り当院での診療体制を維持していく予定です。
年齢 | 患者数 | 割合(%) |
---|---|---|
10~19 | 0 | 0 |
20~29 | 12 | 4.5 |
30~39 | 44 | 16.4 |
40~49 | 62 | 23 |
50~59 | 47 | 17.5 |
60~69 | 43 | 16 |
70~79 | 46 | 17.1 |
80~89 | 15 | 5.6 |
90~ | 0 | 0 |
計 | 269 | 100 |
年次 | 症例数 |
---|---|
2011 | 64 |
2012 | 79 |
2013 | 104 |
2014 | 116 |
2015 | 137 |
2016 | 156 |
2017 | 184 |
2018 | 183 |
2019 | 163 |
2020 | 133 |
2021 | 120 |
子宮頸がん | 36 |
子宮体がん | 55 |
卵巣がん | 26 |
その他 | 3 |
CIN | 43 |
AEH | 2 |
LPM | 12 |
卵巣がんに卵管癌、腹膜癌含む
(合併例も含むため、のべ人数)
手術件数
2021 | 2020 | 2019 | |
---|---|---|---|
開腹手術 | 158 | 221 | 215 |
膣式手術 | 69 | 78 | 106 |
内視鏡手術 | 86 | 99 | 104 |
その他 | 1 | 6 | 6 |
計 | 314 | 404 | 431 |
婦人科手術
子宮悪性手術 | 63(大腸がんの転移1例含む) |
---|---|
このうち(広汎子宮全摘術 | 8) |
(腹腔鏡下子宮悪性手術 | 10)(体癌9、乳がんの子宮転移1) |
(ロボット支援下子宮悪性手術 | 16) |
付属器悪性腫瘍手術 | 37(転移性卵巣がん1例含む) |
(腹腔鏡付属器切除 | 2) |
腹式単純子宮全摘術 | 23 |
TLH | 18 |
子宮筋腫核出術 | 4 |
(腹腔鏡 | 1 |
付属器腫瘍摘出術 | 42) |
(腹腔鏡 | 27 |
RRSO | 3) |
腹腔鏡下生検・観察 | 2 |
開腹洗浄ドレナージ | 2 |
子宮脱手術 | 1 |
円錐切除術 | 45 |
内膜全面掻爬術 | 9 |
TRC | 3 |
単純外陰切除 | 1 |
2021年次 総分娩数 妊娠22週以降 210分娩 210胎
年次 | 症例数 |
---|---|
2015 | 9 |
2016 | 47 |
2017 | 107 |
2018 | 155 |
2019 | 212 |
2020 | 229 |
2021 | 210 |
(妊娠22週以降 210分娩210胎)単胎の児の平均体重 : 3,012g
児出産体重最小症例: 665g 児出産体重最大症例: 3,978g
産科手術件数(妊娠22週以降 210分娩 210胎について検討)
術式 | 件数 | 娩に対する頻度 |
---|---|---|
吸引分娩 | 12件 | (5.7%) |
鉗子分娩 | 2件 | (1.0%) |
帝王切開分娩 | 34件 | (16.2%) |
総数 | 48件 |
鉗子・吸引分娩の適応
適応 | 件数 | 頻度 | 鉗子 | |
---|---|---|---|---|
対鉗子・吸引 | 対全分娩 | |||
NRFS | 11 | 64.7% | 5.2% | 1 |
分娩停止・遷延 | 5 | 29.4% | 2.4% | 0 |
母体疲労 | 1 | 5.9% | 0.5% | 1 |
総数 | 17 | 100.0% | 100.0% | 2 |
その他の産科手術
術式 | 件数 |
---|---|
子宮内容物除去術 | 6件 |
異所性妊娠手術(腹腔鏡) | 婦人科統計 |
異所性妊娠手術(開腹) | 婦人科統計 |
頸管縫縮術(シロッカー) | 1件 |
腹式単純子宮全摘術 | 0件 |
人工妊娠中絶(初期) | 3件※精神疾患2、1型DM1 |
妊娠人工中絶(中期) | 0件 |
総数 | 10件 |
適応 | 件数 | 頻度 | |
---|---|---|---|
対帝王切開 | 対全分娩 | ||
骨盤位 | 4 | (1.90%) | (2.62%) |
既住帝王切開 | 13 | (6.19%) | (8.30%) |
分娩停止・遷延 | 1 | (0.48%) | (1.31%) |
CPD | 3 | (1.43%) | (0.87%) |
NRFS | 4 | (1.90%) | (1.75%) |
前置低置胎盤 | 4 | (1.90%) | (0.87%) |
COVID-19 | 2 | (0.95%) | (0.44%) |
外陰ヘルペス | 1 | (0.48%) | (0.44%) |
知的障害 | 1 | (0.48%) | (0.44%) |
横位 | 1 | (0.48%) | (0.44%) |
総数 | 34 | (16.19%) | (17.47%) |
稽留流産 | 6件 |
進行流産 | 1件 |
完全流産 | 4件 |
切迫早産 | 13件 |
重症妊娠悪阻 | 6件 |
頸管無力症 | 1件 |
子宮筋腫変性 | 1件 |
産褥出血 | 3件 |
子宮頸癌 | 1件 |
計 | 36件 |
---|
NIPTカウンセリング | 3件 |
NIPT検査 | 3件 |
羊水検査 | 0件 |
計 | 6件 |
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